ABS樹脂とは、アクリロニトリル（無色透明の刺激臭のある液体：化学式C₃H₃N）と、ブタジエン（無色の気体：化学式C₄H₆）、そしてスチレン（独特な臭いの　ある無色の液体：化学式C₆H₅－CH＝CH₂）を共重合させて得られる　　　　　　合成樹脂のことです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ABSというのは、3つの単量体の英語の頭文字をとったものです。

ABS樹脂は、３成分が単純な共重合をしたものではなく、　　　　　　　　　　　さまざまな形式で共重合が存在します。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　主に次の２つのものがあります。

　・ブレンド型

　　　スチレンとアクリロニトリルの共重合体（AS樹脂）に　　　　　　　　　　　　アクリロニトリルとブタジエンのゴム状の共重合体を混合したものです。　　　　この場合、正確には3つの単量体の共重合ではなく、　　　　　　　　　　　　　2つの共重合体の混合物になります。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　共重合体の組成や混合割合によって、その物性が変化します。

　・グラフト型

　　　ブタジエンの重合体であるポリブタジエンのもとで　　　　　　　　　　　　　　スチレンとアクリロニトリルを共重合したものです。　　　　　　　　　　　　　この共重合体の一部がポリブタジエンにグラフト重合（幹となる重合体に　　　　別種の重合体が枝のようにくっつく反応）した形になります。

ABS樹脂は、一般に硬く丈夫であり、耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性に優れ、　　　自動車部品や建築材料、機械材料などに使用されます。　　　　　　　　　　　　原料の配合比率や共重合方法により特定の性質を強化することも可能なため、　　種々のABS樹脂（または、類似の合成樹脂）が開発されています。